へし宗。現代パラレル。ソプラニスタ宗三と会社員長谷部

子どもの頃、母親の趣味でピアノを習っていた長谷部。数年で辞めるが、ピアノ教室で知り合った光忠との交流は長く続く。大人になり長谷部はふつうに就職、光忠は音大からウィーンの音楽院へ留学、ピアニストの道に。たまにコンサートのチケットとか送ってくるけどそんなに興味がないので見に行かなかった。
ある日、どうしても今回は見に来てほしいとしつこく念押しされたチケットが送られてくる。若手の演奏会で、ピアノの光忠の他にもフルート、声楽等ジャンルが様々。調べると物凄く話題になっていて、会場のキャパに対して観覧希望者が多すぎてオークションでとんでもない値段が付いてたりする。
光忠は日本人で初めて栄誉あるピアノコンクールで金賞を取った期待の若手、しかもイケメンで喋りも上手いので物凄く女性ファンが多かった(長谷部初めて知った)、そのうえその演奏会には、男性でありながら女声最高音域までを歌うソプラニスタ、宗三が名を連ねていた。宗三はその実力と中性的な容姿、なにより光忠が公言している私生活でのパートナーということで注目されていた…

実はそのピアノ教室には宗三も通っていたんだけど長谷部はまったく覚えていない。
子どもの頃の宗三は両親の厳しいしつけで女々しいことを一切禁じられており、髪は五部刈りだったし短パンスニーカーだった。一人称も俺だったしピアノを習わせてもらう代わりに剣道もやらされていた。全く自分の心に沿わない格好をしているせいで全然自分に自信がなくて、内気で恥ずかしがり屋だったので長谷部のことも遠くから見ているだけだった。そんなんだから別に長谷部が薄情なんじゃなくて、本当に記憶に残らなかった。
その後、左文字家は引っ越すが、宗三と光忠は音大で再会する。その頃には宗三は親の支配から脱出していて、びろんびろんな服にピンク髪でコロラトゥーラを歌い倒していたので光忠も全然気付かなかった。久しぶりに会ったふたりは一気に距離を詰め、交流を深めるうちに光忠がパートナーの居るゲイでその相手との交際を秘密にしておきたいことを知ると、宗三は自分が偽装恋愛相手になることを買って出る。宗三自身ジェンダーに拘りがなかったし、その行動や容姿から私生活に目を向けられがちなのを面倒に思っていたので、お互いに実のあることだった。
そんなわけで目立つ若手音楽家二人がカップルであるというのは周知の事実として広まり、ふたりは煩わしい詮索の全てを相手を風避けにすることでまぬがれて音楽へ打ち込んでいた。

というのは終盤で分かる感じにする。ピアノ教室では練習に使うのはアップライトピアノ。先生のプライベート用のグランドピアノは特別なときにだけ触らせてもらえる憧れの的だった。あるときその場に居た数人だけがグランドピアノを弾く許可を貰えたが、その頃の宗三は子供たちを押しのけて椅子に座る押しの強さがなく、遠巻きに見ているしかなかった。そのときアラベスクか何かを弾いていた長谷部が気付いて、「お前まだ弾いてないだろう」と席を譲ってくれた。「名前は?」と聞かれて答えるけれど声が小さくて何度も聞き返される。そのうち飽きてどこかへ行ってしまった。→冒頭、長谷部的には初体面の時の「僕の名前は左文字宗三。ちゃんと覚えてくださいね」に繋がる。

光忠は普段よりナルシスト二割り増し、宗三は天才肌的な傍若無人感をマシマシで
各回のサブタイトルは有名な歌曲とか それをその回のどっかで歌うとか ロマンだけど夜の女王のアリアは入れたいなあ 宗三はコロラトゥーラが得意という設定、それで世界に数人のソプラニスタの中でも更に差別化を図っている 宗三は子どもの頃のあれこれで、無意識のうちに自分にしかできないことを探してるし自分だけを愛してくれる人を求めている
とりあえず身内のお楽しみオペラで主役を張る宗三と、チョイ役で出てきてめちゃくちゃえろい二重唱する光忠ぜったい入れる光忠バリトン
ラストの場面を先に出す→ウィーンでの再会→(以降回想)若手音楽会で初めて宗三の歌を聞く→お互いを知りあう→好き合う→価値観のズレが表面化、付き合い切れなくなって長谷部が去る→宗三が声を失う→光忠が良い仕事をする→ウィーンでの再会(冒頭に戻る)

書きたかったこと→
「自分が簡単に幸せになれる道を認識しながらも、あえて茨の道を行く宗三と、最初はそれを理解できず道を違えるも、最後には愛情というよりも許容の気持ちで傍に居ることを選ぶ長谷部」。楽に歌えて需要もある蝶々夫人を「安易で平穏な道=日本で音楽活動をしつつ長谷部と生活する道=歌手として長生きできる道」、誰にも望まれず歌うのが苦しい夜の女王を「前人未到の茨の道=ハイレベルな欧州音楽界で独りあがく道=喉を酷使し歌手生命の短い道」、という対比で作中で小出しにする感じで、こう…
イメージは『グラン・ブルー』。ジャックが宗三でジョアンナが長谷部。

内容を決めていたパート→
・冒頭
長谷部が観客席に沈み込むと同時に、無人の舞台にスポットライトが落ちる。歌声は舞台袖からではなく、空から降ってくるようだった。枝から枝へ飛び回るような音の軽やかさに、尾羽の長い桃色の小鳥を連想する長谷部。男女の別もつかぬ人物が歌いながら舞台上へ歩み出て来る。オペラ『カルメン』よりアリア”ハバネラ”←章タイトル
・序盤
激務で精神的に参って来た長谷部、宗三にそそのかされて?長期休暇を取得。宗三の本拠地であるウィーンに行く。二人の距離が一気に近づく(恋愛で一番楽しいとき)。美味しいレストランで食事を摂ったあと、ほろ酔いの二人は遠回りして帰る。深夜の教会の前の広場で宗三、長谷部のためだけにアリアを披露する。オペラ『蝶々夫人』よりアリア”ある晴れた日に”←章タイトル。中性の宗三にとって一番楽な声域の曲、日本人の宗三にとって一番楽な役柄。世間からはマダムバタフライ役を求められていることを知っている。だからこそ宗三はそれをソプラニスタとして仕事では歌いたくない。未だ保守的なクラシック音楽界では、宗三はアジア人の性的マイノリティとして二重の枷を背負っている。だからこそ宗三は誰より高い声で、誰より美しく歌うことを己に課している。目標は、魔笛の夜の女王役を演じること。
・中盤
へし宗のすれ違い。生活と行動の中心が常に歌である宗三にだんだん長谷部が付いていけなくなる感じ。(酒もたばこも飲む長谷部の隣でひたすらコントレックス飲んでるとか、セッセセの最中に全く声出さないとか、砂地とか道路とか歩きたがらないとか、そもそも昼間に出歩かないとか。)もっと話し合いたい長谷部に対して本番直前の宗三が無言でマスクを掛けるところとか書きたかった(あなたのために出せる声はもうありません)。喧嘩別れして長谷部は帰国、宗三は変わらずトレーニングとコンサートの日々を送るけど、なんか調子が悪くなっていて、ぷつっと声が出なくなって休業。自暴自棄になっているところでチャイコンかなんか終わった光忠が駆けつけ、どうにか長谷部と連絡を取らせる。カスカスの声で電話する宗三。「あなたが居なくなって、お酒を飲みました。煙草を吸いました」「美味かったか」「まずい…」
~ここで書きたかったテーマについてめっちゃ書く感じになる~宗三の幸せを願う気持ちが宗三の夢と相反する事態にどう立ち向かうんだ長谷部~
・ラスト
復帰した宗三、アジア人で初めて国立オペラ座の舞台で主役を務める。このことは日本でも大きく報道される。シーズンオフに帰国し、一年ぶりの若手音楽会に出る。歌う前の挨拶「色んな事があった一年でした~(なんかいい感じのこと)~故郷への想い、自分に求められていること、ありのままの自分で居られることの大切さ的な~それでは聴いてください。オペラ蝶々夫人より、ある晴れた日に」。宗三はマダムバタフライは歌わない、と公言していたので、ざわつく客席。光忠のピアノで前奏が流れる。…曲ちがくない?「…なんて言うと思いましたか!」オペラ魔笛より、夜の女王のアリア(←章タイトル、と思ったけど曲名だったら”復讐の炎は地獄のように心に燃えて”だな)。超絶技巧のコロラトゥーラを歌い倒す宗三。血を吐きながら歌い続ける桃色の孔雀の幻想。美しい鳥が声を枯らし舞台を降りる日まで見届けるのが自分の愛情だと悟りながら、スタンディングオベーションのために立ち上がるシーンで終わり。

無駄に決めていた設定→
若手音楽会の出演者=宗三のG大時代の先輩後輩や知り合い。音楽会の発起人は五条先輩(鶴丸。G大作曲科卒)。鶴丸が在学中に、自分の作った曲を演奏させるために編成した学内オーケストラが音楽会の前身。ピアノ①の光忠、ピアノ②の白野弟(膝丸)、バイオリンの歌仙、ヴィオラの青江、フルートの蜂須賀、クラリネットの亀甲、ソプラニスタの宗三、カウンターテナー/オートコントルの白野兄(髭切)、指揮の一期。白野兄弟と亀甲は学外からの参加だった。
初演で演奏したのは、組曲『動物の謝肉祭』を鶴丸がアレンジしたもの。あまりにトリッキーで型破りな譜面は難易度の高さもあって賛否両論を呼び、参加希望者はアクの強い面子になった(必要人数に足りなかったので、学外から三人連れて来た)。宗三は『白鳥』でソプラノソロを担当していたが、前日に体調不良を押して他のコンクールに出場していたこともあり、舞台上で酸欠で倒れる。しかし倒れ伏した体勢のまま歌い切り、最後にF6の絶唱をしたことでアクシデントではなく演出だと観客がみな信じる事態となった。この『瀕死の白鳥』で宗三は「超高音を歌う若手」として脚光を浴びることになった。
”謝肉祭”メンバーは全世界に散らばって活動しているが仲は良く、年一回オフシーズンに日本でコンサートを行うのを楽しみにしている。みんな顔が良いので”謝肉祭”はクラシック好きとアイドル好きの中間を取った感じのファン層に支えられている。日本クラシック界に見切りを付けた鶴丸は作曲活動をやめ、今は謝肉祭メンバーを始めとする若手音楽家のプロデュースとマネジメントを本業にしている。彼のマネジメントを受けて、歌仙と青江はフランスを本拠地に活動しつつ弦楽二重奏デュオとしても演奏会をしていたり、亀甲は欧州のオーケストラを一年契約で渡り歩く流しのクラ奏者をしていたり、趣味で教会音楽を歌っていればよかった兄者は単独コンサートやらCDデビューやらするし、兄者の伴奏以上のことはするつもりがなかったお膝はショパンコンクールを目指したりするようになった。光忠はチャイコン。鶴丸が自分の音楽活動を辞めた理由にはG大を首席で卒業しながら故郷の小学校で音楽の先生をやっている一期先輩が関わっていて のあたりで無駄設定の多さに気付いたよね

お蔵入りの理由→
無駄設定を考えるのが楽しすぎて本筋に戻るのに時間掛かってる間に本にするタイミングを逃しジャンル移動してしまった。

子どものころ一緒に教会の聖歌隊に入った白野兄弟が、お膝だけ変声期の喉の痛みが酷くてそのまま歌はやめてしまったけど兄者は声変わりが来ないまま歌い続けて、兄者の練習に付き合うためお膝はパイプオルガン弾き始めてどんどん上手くなって、音楽の道を志して一緒に音大入学して、でも一生このままじゃ居られないなあって思ってたあたりで謝肉祭に参加して、卒業後に鶴丸が「俺なら君たちに音楽で飯を食わせてやれる」って持ち掛けたとき、二人が出した希望は「ずっと二人で居られるように」なんだよね、それで鶴丸は二人にブランドを付けるために兄者を天使の歌声で売り出しつつのお膝に三大コンクールどれかで上位入賞して箔点けさせて、奇跡の双子のニコイチセットにしようとしてるんですよ(膝髭ルート)
光忠の「秘密にしておきたい本当のパートナー」は調律師の廣光さんで、光忠は自分が弾くピアノは廣光さんにしか触らせない(ちょっと潔癖症の気がある)。光忠の演奏はドラマチックでロマンチックで「ピアノを抱いて鳴かせてる」とか揶揄されてるけど、実際のところ彼がエロスを感じるのはピアノの弦を繊細に弾く廣光さんの手付きとかであって、ひいてはピアノみたいに調律される自分であったりとかして、そんな光忠だけどコンクールのピアノは会場付の調律師に任せるしかないから大舞台ではちょっとテンション上がらないんですよね(くりみつルート)
人気ロックバンドのリーダーである義理の兄(連れ子同士)と蜂須賀の確執であるとか、血の繋がりのある弟も金管やってるけど最近軽音にも興味あるっぽいとか、亀甲の弟二人もクラシックやってて一番下の弟はパーカス志望で光忠に懐いてるとか 幾らでも出てくるんだよ
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