日常生活がコチャついている。
私レベルの現実逃避技能を持っていると、二次元の世界とその空想に耽る時間こそが人生であり、現実を過ごすことは人生を支えるための出稼ぎに過ぎない。
つまり日常生活に追われる今は、手段に目的を侵害されているようなもので、甚だ遺憾だ。
世間はネロ祭りももう終わりかけだというのにろくに周回できていない。
静かな自室で空想する時間が十分に取れないと、私は集中力が格段に落ちる。するとFGOが起動するまでの時間で寝落ち、アーラシュが宝具を撃つ待機時間で寝落ち、後衛からマーリンが出てくるまでのタイムラグで寝落ち、などということになる。
スマホゲーですらこの有り様だ、ツイッターも開いたとき目に入ったツイートしか読んでいないし読書などできるわけもなくPCは起動すらできない。つまり今の私は死んでいるのと同じだ。
しかしまあ、よくもこれだけコチャつけるものだと感心するほどコチャついている。
幸いまだメンはヘラっていないが、いっそヘラりまくって往来で無差別に通行人へウンコでも投げつけまくった方が楽になれるのではないか。行先が病院だろうが警察だろうが鉄格子の嵌った静かな部屋に違いは無いだろう。
ちなみに「メンがヘラる」の言い回しはカレー沢薫女史より拝借した。私は女史が個人サイトで乙女ゲーのレビューをしていた頃からのファンだ(乙女ゲーに興味はないのに女史のテキストを読むために通っていた)。
女史がFGOで土方に爆死したと知ったときは「それでこそ女史」と好きさ100倍だったが、その爆死額が二十数万円だと知った途端にガクンとボルテージが下がり、土方を引いた瞬間にブロックした。この時は自分でも冷静に「私はメンがヘラっているな」と思った。
そういえば先日、遂に三田先生が孔明を引いた。実は同じタイミングで私も孔明を引いたのだが、自分のことなどそっちのけで三田先生の努力が報われたことが嬉しかった。
自分には目もくれずよその自分を祝われまくるとは、うちに来た孔明は少し不遇だとも言える。しかしエルキドゥでメンがヘラり尽くした時期に石の在庫を処分していて二枚引きしたマーリンなどは「お前じゃねえよ」と数か月放置されていたので彼に比べれば何億倍もマシだ。
私がロリータだったころ、私の家は大変に貧しかった。いや、成長しても割と貧しかった。貧困エピソードなら一冊新刊が書き下ろせるくらい語れるが、不幸自慢は何も生まないとハチクロで教わったので自重する。
だが、物が無い環境で育ったことで、私は物が無くても割と平気なメンタリティを手に入れた。そしてそれは結構役に立っているようだ。
両親が共働きだったので、一人っ子の私は夜まで独りで過ごした。食費に困窮する家庭に玩具などあるわけがない。テレビは五月蠅くて嫌いだったしそもそも電気代を節約せねばならない。
そんな私が生み出した空前絶後の遊び、それが「石ごっこ」だった。
単純な遊びだ。床に正座し、手で頭を抱えたポーズで額を床に付ける。少し息苦しい状態で目を閉じ、「自分は石だ」と思い込む。
石なので動かない。呼吸もできるだけ静かにする。益々息苦しくなる。耳のあたりの血管がドクドク言う。床に押し付けられた部分が痛い。それでも動かない。石は何も感じない。とにかく余計な事を考えないように努める。だんだん感覚が鋭くなってきて、無音の音(めっちゃ静かな部屋ってキーンみたいな高い音聞こえるよね? 私だけ? 幻聴?)が聞こえてくる。その頃には床に接している足の骨の感覚も、膝に押し付けられた胸や顎の感覚も、本当か嘘か分からなくなってくる。そこですかさず「これは嘘だ」と思い込む。なんとなく重力もぼんやりしてくる。「これも嘘だ」と思い込む。自分がなんでここに居るのか、本当にここに居るのか、そういうことも曖昧になってくる。
気付いた時には平気で二三時間経っている。なんとエコな遊びだろう。
寝入りばなの感覚に似ていると思うが、頭ははっきりしている。石になっている間はとにかく物の見方が客観的になる。足が痛いなあ、息が苦しいなあ、また同じことを思い出しているなあ、心臓がうるさいなあ、私は怒っているなあ、云々
この、自分の心の動きを他人事として捉える、というのはメンがヘラるのを防止するのに有効らしい。エルキドゥで思いっきりヘラった人間が言っても説得力が無いが、それでも嫉妬心のトリガーになりそうなものごとから自分から遠ざかるよう振舞えたのは石ごっこの成果だと思う。「私は他人を妬んでいるなあ」とメチャクチャ客観的に理解できたからだ。そうじゃなければエルキドゥの召喚スクショを載せている人に片っ端から「引けなかった人の気持ちも考えて下さい」系ご意見メッセージをお送りする人になっていたに違いない。
あまりにも二次元及びインターネッツから遠ざかっていたため、私は本当に生きているのか? と不安になったので試しに文章を書いてみた。とりあえずまだ思考力はある。ついでに手持ちの石を投げたらシバの女王が二人来た。やはり私は課金しない方がいい。
バビロニアまでほぼイリヤだけでやって来たような弊カルデアキャスター陣営だが、ここに来て一気に充実した。王様、イリヤ、エレナ、アンデルセン、マーリン、孔明、シバ。そしてコンテナのアヴィケブロン。(実はもう一騎、割と強い奴がいるのだが、うちの芸風には合わないため話に出すつもりはない)
シバが来たことで、王様の取り巻き? ポジションになりそうな人たちも充実した。秘書のシバ、側近の巴さん、護衛の千代女、軍師の孔明、食客の茨木、マーリンのマーリン。いいね、何でもできそう。生き返ったら何か書きます。